✨どしゃ降りだっていいじゃないか。最後に晴れれば✨

小説家・小宅高洋(新ペンネーム)のひとりライフ。

■ ヒステリックな女性にはとてもかなわない。

友人から電話があって、とうとう正式に離婚するのだという。

これで僕の知人ないし友人で離婚するのは、これで6人目だ。むかし仕事のお付き合いがあった人たちのことをきちんと思い出して数えてみれば、ずっと多くなると思う。

 

僕は男だから男の立場しかわからないし、どうしても男性側に自然肩を持ってしまうのだろうけれども、それはいま置いておくとして、離婚した友人知人の奥さんにはある共通点がある。

それは「ヒステリック」ということだ。

 

今回の友人は結婚して数年たたないうちに、顔面に猫がひっかいたような三本の傷が斜めに入り、話を聞いてみると、加害者は奥さんだったらしい。

ヒステリーを起こし、長い爪で友人の顔と言わず、腕だのにそうとう深いひっかき傷を作り、そればかりでなく、つかみかかり、シャツは引きちぎれ、大変な騒ぎだったらしい。

喧嘩の原因はよく覚えていないのだが、浮気でなかったことは確かだ。

以来その奥さんはタガがはずれたように、なにかことあるごとに泣き叫びわめいて暴力に訴えるようになったという。

友人は子どもが小さいからガマンしていたが、その子の就職が決まって、もういいだろう、責任は果たしたと話をしたそうだ。

もちろんそれですったもんだが置き、奥さんがとうとう同意するまで何年もかかった。奥さんはとにかく、友人が外で女を作ったと頭から決めつけ、どす黒い憎悪を勝手に増幅していったらしい。

 

その話を聞いてぞっとしたのだけれど、我が家もまさにそれだった。

妊娠したころからだんだん酒乱の様相を示すようになり((結婚前はロンリコという70℃を越えるアルコール度数の強い酒で作ったカクテルを7杯ぐらい飲んでもケロッとしていた)、それがヒステリーを呼んで、

「カッとなるとなにをするかわからない性格」

と義母が義父のことを表現していた、まさにその義父(つまり自分の父親)とそっくりの性格になっていった。

カッとなったら、満員のレストランだろうが、人通りの多い路上だろうが、とにかくわめき散らす(機嫌がいいときには逆に「アハハハ」と大きな声で笑う。つまり喜怒哀楽が非常に激しくなる)。

「あんたねえ、言っとくけどねえ、あたしのことなんだと思ってんだよ。馬鹿にすんじゃないよっ!」

そんな調子で、子どもたちの目の前で、両隣に仲良く食事している家族連れがいようがカップルがいようが、仲居さんがいようが、なにか勧めに来たウエイトレスが驚いてそのまま帰ってしまおうが、周囲のことがまったく目に入らなくなってしまう。

 

しかもまったく別件で、義母が結婚前に届いたという封書を持ち出してきて、

「こんなこともあったのに十何年もやってきたんだから、これからもお互い歩み寄って……」

と言ったその中身というのが、

「お前は絶対に幸せにならない。あたしがつぶしてやる」

と言った妻宛の脅迫文のような内容だったのだ。これで精神が少しおかしくなった。

 

僕に身の覚えはまったくなく、なにしろ中学高校が男子校、その上大学のクラスに女の子3人というほとんど女性の匂いのしない生活を送ってきたのだから、友人の彼女の友だちといっしょに飲んだり、大学のクラブで当時流行っていた大学コンパに参加したり、そのていどしかなかったのである(いろいろと社会の縮図は見てきたものの)。

後々考えてみれば、それは僕がアルバイトで何人かの女子高校生に勉強を教えていたことがあったのだが、そのうちの誰か「かも」知れないというぐらいしか心当たりがない。

 

それはともかく、義母がよかれと思った見せた封書によって、彼女の妄想はますます強まり、少しでも遅く帰ってくれば、

「女のところにいたんだろ!」

といった調子で、家庭内での喧嘩はどんどんひどいものとなっていった(僕も若かったし、負けず嫌いだったから、怒鳴り声には怒鳴り声で返していた)。

 

結局離婚した契機となったのは、なんと中学を卒業したばかりの息子が、

「お父さん、もう駄目だよ。どこへ行っても、旅行しても食事に行っても、喧嘩しないことがないでしょ? もうムリだよ」

と言ったその言葉によってだった。

 

身の上話はこれぐらいにするとして、自分の周囲で離婚した人間の奥さんは、ほとんどがこうした過度のヒステリー、癇癪持ちであったことは共通している。

泣く、わめく、怒鳴り散らす……いくら怒鳴って言い返していても、男は歳とともにどんどんと物事が面倒くさく、人生を達観して、仙人くさくなってゆくものだ。つまり、時間がたてばたつほど、どうでもいいやという気分になってきて、言い返す回数もどんどん減ってくる。

「ああ、そう。わかった。好きにしていいよ」

になってしまうのである。

そして、ゴルフだの、カラオケだの、釣りだのといった趣味の世界に走るか、文字通り別の女に走る事になる。

「男はもともと浮気性」

だという烙印を押されているけれども、その浮気に追い込む原因を作る女というのも、多いか少ないかはわからないが、確実に存在する。

なんのためにそんなことまでするのか今でも理解できないのだが、結局嫉妬心ということしか考えつかない。

 

唯一、喧嘩ばかりでぎくしゃくしていても離婚していない友人の奥さんは、ヒステリーを起こすだけでなく、発作的に自殺をしそうでそれがコワイから仕方なく、という人間ひとりである。

 

なんだか雨の日にそんなことを聞いて、とても暗い気分に陥った。

彼は会社もやめ、家も退職金もすべて奥さんに渡し、自分は兄弟のいる郷里に帰って空いている家作を借りて、そこで好きな趣味に没頭するつもりだという。