✨どしゃ降りだっていいじゃないか。最後に晴れれば✨

小説家・小宅高洋(新ペンネーム)のひとりライフ。

■ 村上春樹の作家生活(2)

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「芸術家と創作家の違いとは何かというと、芸術家というのは自分がこの地上に生きていること自体に一つの意味があると思っている人ですね。僕は自分のことをそうは思わない。

ごはんを食べて、地下鉄に乗って、中古レコード屋に寄って、というふうに普通に生活しているとき、村上春樹というのは何ら特別な人間ではありません。そのへんにいるただの人です。

ただ、机に向かってものを書く時だけ、僕は特殊な場所に足を踏み入れていくことのできる人間になります」

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「自由になりたい、個人になりたいという思いが僕には強くあり、自由であること、束縛されていないことがなにより重要だった。そのかわり社会的保証はない。大きな会社に勤めていたり、家庭を持っていたりするというのは、一種のセキュリティが働いているということです。そのころ僕が描いていた主人公たちには、そんな装置がほとんど働いていません。それが大事なポイントだった。当時の日本は今よりもはるかに、そういうセキュリティに対する信頼が強かった」

「二十代のころ、どこかの新聞で、自由とか友愛とか平和とかいろんな言葉を並べて、あなたはどれにいちばん価値をおきますかというアンケートがあったんです。僕なら自由をまず選ぶなと思った。でも、何千人かに聞いた結果、「自由」はたしか七位か八位くらいにしか入っていなかった。一位はなんだっけ? よく覚えてないけど、「平和」とか「友愛」とか、たしかそういうものだったと思う。そうか、日本人というのはこういう国民だったんだって、そのときすごく感じたのを覚えています」

「……日本人は自由なんてとくに求めていないと悟ったんです。そういう国のなかで自由でありたい、個でありたいと思うことのきつさを、僕は自分なりに、小説的に描きたかったんだと思う。それがぼくにとっての三十代のひとつのテーマでした。とにかく日本社会の強制する制度から抜け出すこと。それはもちろん表裏一体のことでもあります」

「僕の書いたものを評価する人もいればしない人もいるだろうけど、それはそれとして、僕は僕にしか賭けないものを書き続けてきた。そのことは確かだと思うんです。結局、日本ではオリジナリティというのはあまり大事なことじゃないのかなと、最近になって考えるようになりました」