僕なりの文章修行術⑨……お勧めする本(一般編)
時代小説家として生きている自分(5年以上のブランクがあるため、とっくに忘れ去られているだろうが)にとって、お勧めできる本というのは、ごくわずかしかない。
その中でも「これは絶対だ」と思われるのは、たぶんあまり売れてはいないだろうが、
『漢字の使い分けときあかし辞典』
という本である。
同音異義語のうち、この文脈ではどの漢字を使うのか、長年悩んできて、今でも悩み続けている問題がこれである。
この手の本は本当に少なくて、2016年にこの本が出るまでは、ポケット辞典とか実用字典とか、ろくでもない本を何冊も買っては、読み比べたりしていたが、そもそも調べたい漢字の項目がなかったり、いったいどうしてそういうことになるのか納得できない説明だったり、本当に金をドブに捨てる思いで、それでも必要だから、渋い顔をしながら、三省堂本店や八重洲ブックセンターを探し回ったものだった。
(この分野にマトモな学者はいないのか?)
と歯がゆい思いがしてならなかった。
著者である円満字次郎氏(こりゃ筆名か???)は、奥付を見ると、出版社に勤務されて国語の教科書や漢和辞典などに携わっていたそうだが、41歳のときに独立してフリーとなられた方だそうである。
やっぱり!
もと編集者じゃないと書けないもんね、こんなに読者のことを考えた本なんて。
学者先生が作ってたら、ただひたすら難しいか、引用が万葉集とか江戸時代とか、そんなの使う現代人なんて特殊だろ! ってな本になっちゃってたはず。
いや、単なる読み物として本当に面白い。
これこそ座右に置くべき辞典だろうと思う。
学研からも『漢字の使い分け辞典』という安価な本が出ているが、間違いなくこの辞典から語句を取捨選択したものに相違なく、そういうものはまず使い物にならないから、少々値は張る(2530円/研究社)が、こちらを買っておいて間違いない。
同じ円満字氏(やっぱペンネームだろう?)には、以下の本もあるが、小説を書くのに必要なのはやはり上記だろう。
ただし以下の本は読み物としてはとても面白い。
これらを読んでおけば、ちょっと難解な白川静先生の本まで手を伸ばさなくてもいいと思う。
(部首ときあかし辞典ば、漢字がお好きならばという条件付き。でもこれら3冊を読んでおけば、年に1度ぐらいしか引かない漢和辞典など、買わなくてもいいんじゃない? と思うぐらいだ)
是非ともご参考までに。
しかし円満字って……😓