✨どしゃ降りだっていいじゃないか。最後に晴れれば✨

小説家・小宅高洋(新ペンネーム)のひとりライフ。

《結婚なんぞしちゃあなんねえ!》⑨

「専業主婦」という日本独特の化け物(2)
具体例をひとつ、ふたつ述べてみよう。
知人で、フランス人と結婚して向こうに住んでいる雑誌編集者女性が言うには、
 
「こっち(フランス)の女性は、もう働くわ働くわ。私にはとてもできないってほど良く働くのよね。
それは専業主婦だろうが、共働き家庭の主婦だろうが、関係ない。
ただ、男も顔負けの仕事っぷりが、ある女性では大学の勉強に変わり、ある女性の場合は完璧なまでの家庭の仕事に変わるだけのこと。
子育てしてようが、そんなことは関係ないわ。すべてパーフェクトにやりこなすのよ」
 
旦那さんとは、月に10万円ずつだと決めたらお互いに10万円を出して家賃や生活費、食費なんかに当てる。
ただ、大学に再入学して勉強してる最中とか、子育てまっただ中で外に働きに出るわけにはいかないって時には、旦那さんが大幅に援助するけど、主婦の方が旦那さんの財布を握る事なんて絶対にない。旦那さんの方だってそう簡単に財布は手放さないしねと彼女は笑う。
 
ベビーシッターを雇うんだったら、出し合ったお金の範囲内で、旦那さんとも話し合うなどして乗り切り、とにかく目一杯働いたり勉強したりする。
 
「だから日本の専業主婦みたいに、大勢でランチするなんてヒマはまずないわね。せいぜい同じアパートで仲良くなった人とか、大学や職場の女性とたまに会ってランチするなんてことはあるでしょうけど、ママチャリやベビーカーを10台も20台も連ねて食事する会なんて、まず聞いたことがない。
その代わりパーティーとかに旦那さんと出席するなんて時には、着飾って目一杯遊ぶけど。
とにかく自立してるのよ。
フランスにいて、昼間ヒマしてる自分が恥ずかしくなる。
自分ではそれなりに働いていると思ってたんだけど」
さらに彼女は、フランス人が一見冷たくてとことん個人主義に見えるのは、忙しすぎていちいちフレンドリーにしているヒマがないからということもあるのではないかとも推測している。

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もう一人は彼女の友人であり、こちらはドイツ人を旦那さんに持つキャリアウーマンだ。
彼女によれば、フランス人女性なんて甘ちゃんもいいところらしい😓。いわゆるドイツ人の緻密さというのは、まさに普段の人生にきっちりと現れていて、
「いちどこうこうこういう手順でやる」
と決めたら、死んでもやるそうなのである。
けっこう疲れるところまでやったから、もう夜だけど親しい友人に電話して、ワインでも飲みに行こうか誘うというのがフランス人女性だとしたら、ドイツ人女性はその時間も勉強その他決めたことをやり続けるそうなのである。たとえ死んでも(うわあ)。
だからだらしない男は大嫌い
 
ビールをあおりながらパプで大声で歌うのは、自分の決めたことがカンペキにクリアできた時か、あらかじめ
「毎週土曜日は飲みに行く日」
と決めておいた計画に従って仕事や勉強をテキパキとこなし、月曜から金曜日まではその鉄壁をくずさない(まさにベルリンの壁ですね)。
 
例えば塹壕(ザンゴウ)を挟んで対峙(タイジ)しているフランス軍とドイツ軍がいるとして、フランス人はあるとき、
「今日は敵さんも撃ってこないし、飲みに行こうぜ」
と街に繰り出し、女をからかったり口説いたりしちゃう。
 
ところがドイツ兵は、上官が部隊の交代を命ずるまでは、ずーっとライフル銃を構えっぱなしで動かない。極限の緊張状態を続けたまま、いつ撃たれても反撃できるように、塹壕にこもっているそうなのである。
 
日本で言えば、撤退(これを転身と言った)の命令が下るまでは、次々と味方が死んでいっても、持ち場から離れなかった東北兵と、今日は女でも買いに行きもっそ(方言わからず……)と戦争中にもかかわらず豪快に遊んでしまう九州兵、その中間に位置する東京兵(機を見るに敏)と、ダメダメで中国兵の標的にされて負け続けていた大阪兵って漢字かな。
すべて余談でした。すんません😣。
 
「それでも以前と比べれば、日本でも自立した女性が急速に増えてきたけれど」
と前置きした上で、
「それだって、共働き家庭の主婦に限る、と但し書きをつけたいぐらいで、専業主婦で働いているのは、パソコンひとつで仕事をこなしているとかの数少ない女性に限られる」
という。
 
旦那さんの収入がかなり良くて、食べてゆくのにまったく心配はないという、言わばプチブルの、しかもその中でも上位クラスに位置する家庭の主部だろうと。
もちろん生まれつき頭がいいし、才能は人一倍あるし、当人の努力もあってのたまものであって、決して玉の輿というわけではない。
それはきっと、
「親御さんの教育の仕方が良かったんじゃないかな」
当人の才能と、将来を見越した親の教育とがあいまってこそ、良き伴侶に出会うことができたのだろうと。
しかしやはりそこには“うまれつき幸運に恵まれた女性”という側面があることは否定できないし、そこがフランス人主婦、あるいはドイツ人主婦のストイックな生き方とは一線を画しているというのだ。
 
つまりはまだまだ日本の専業主婦は、貧乏から歯を食いしばりながら身を起こして……といった姿勢に欠けるのではないかといい、彼女もまた最初の女性同様、
「とても自分に真似はできない」
という。
ふたりともかなりの努力家であるし、才能も人一倍であるにもかかわちらず、だ。
 
日本の専業主婦というのが、他の先進国のみならず、世界のあらゆる国から見た場合には、どこか「特権階級」の匂いが芬芬(フンプン)とする。
これが、専業主婦が、日本という特殊性を伴った化け物と言われるゆえんであるかも知れない。
そしてそのこの上の無い快適な地位を守るためには、彼女たちは時おり信じられないような行動をとることさえある。
たとえそれが、自分にその地位を与えてくれた愛すべき相手だったとしても。