✨どしゃ降りだっていいじゃないか。最後に晴れれば✨

小説家・小宅高洋(新ペンネーム)のひとりライフ。

戯言

なんだってんだい、こちとら江戸っ子でえ。

わっちの才能はこんなもんじゃないはず。

 

「なあんて強がり言ってばかりいるんでね。あたしゃちょいとお小言を言ってやったんだよ」

「なんて言ったんでげす?」

Netflixやめろってさ」

「大家さん、そりゃあ殺生だ。スケの野郎、女房に逆離縁を食らった後、女には捨てられるわ彼女いない歴10年になるわじゃ、さすがに引きこもりになっちまう。

しかも煙草も30年以上も前にやめたと思ったら、こんどは酒量が増えちまって、挙げ句の果ては肝臓がいかれちまった。

今じゃあ楽しみと言えば、甘いもん喰いながらNetflixでホラーかSFかアクションなんかを見るぐらい。

Netflixぐらい許してやっておくんなせえよ」

「いや、スケの野郎、素直にNetflixやめたから、小言を言ったこっちが面食らっちまったのさ。あの男、まだ捨てたもんじゃないな」

「そうですかい・・・・・・あれだけ楽しみにしていたNetflixをねえ・・・・・・」

そこへ棒手振りの矢の字がやってきて、頼まれた鱸の刺身を桶の蓋の裏をまな板がわりに器用に刺身にこしらえながら、

「なんですかい。スケさんのお話ですかい? 今さっき行ってきたばかりですよ」

「へえ。それでどうだったい。手持ち無沙汰にゃしてなかったかい? あるいは落ち込んでなかったか、どうも気になってな」

家主の心配顔に向かって、矢の字が言うことには、

「いたって元気でしたぜ? なんでも昨夜、WOWOWに加入したとかなんとか、サッカー見ながら胡桃饅頭を頬張っていやしたよ?」

「あの野郎・・・・・・」

家主はすくっと立ち上がって、

「こうなったら俺もURに見込まれた男、店賃きっちり取り立ててやる」

「え、店賃払ってねえんで?」

「ああ。1ヵ月分、払いがねえ」

(実話)